武部新新農林水産大臣(衆院議員・北海道12区)に聞く

適正な資源管理で儲かる漁業へ転換を
高付加価値化など未来に向けた取組を支援

 第2次岸田内閣発足に伴う内閣改造で、武部新衆院議員(北海道12区)が農林水産副大臣に就任した。水産王国北海道の中でも、特に水産業の盛んなオホーツク・宗谷管内を地盤に、自民党の水産政策推進議員協議会の水産加工振興専門部会座長を務めるなど、水産業界に精通している武部議員の副大臣就任は水産業界にとっても大変心強いものがある。水産業界はサケ、イカ、サンマなど主力魚の不漁に加え赤潮や軽石の発生など気候変動に伴うものと思われる問題や、コロナ感染ウイルスが沈静化しつつあるとはいえ第6波への備えや、オミクロン株への対応等難しい局面にある。これらに対応しながら、スタートした改正漁業法の下で資源の持続的利用と、水産業の成長産業化を目指す新たな水産業の構築が求められている。そこで武部新農林水産副大臣に今後の水産政策をどのように展開していくのか、その方向性をインタビューした(有村)。 

―今の水産業界の現状をどのように捉えていますか。

 武部副大臣 様々な課題を抱える水産業界の構造的な問題に対応するために、漁業法の改正が必要となりました。この間、漁業生産量でいえばピークだった1984年の1282万トンが、今や3分の1にまで減少し、漁業就業者数もこの10年間で約8万人減り約13万6000人まで減少しています。こうしたことを考えると新たな漁業法をスタートさせ、水産日本復活のために適正な資源管理をしながら、儲かる漁業を実現しなければならないタイミングが来たのだと思います。ただコロナでマグロ等高級魚の消費が低迷し、加えて秋サケ、サンマ、イカが不漁で生産者から加工業者、消費者まで困っている状況です。これに追い打ちをかけるように原油価格や資材の高騰で全体的に大変厳しい。さらに、北海道では赤潮、南の方では軽石の発生があり、地球温暖化等に伴う大規模な自然災害も起きています。一方で、日本海のスケトウダラやマイワシなど回復している資源もあり、北海道のホタテに代表されるように輸出が好調で、水産物の中でもブリ、真珠と並んで輸出品目の大きな柱となっています。政府は農林水産物の輸出額5兆円の目標を立てていますが、コロナ禍にあっても輸出額が順調に増加しているのは明るい兆しです。また、私は自民党の水産加工振興専門部会の座長をしていましたが、経営基盤が脆弱と言われる水産加工業界にあっても、付加価値の高い商品開発を行うなどの新しい動きも出てきています。未来志向の前向きな取組を支援し、伸ばしていきたいと思っています。

―持続可能な資源の利用の仕方と同時に漁業者の所得向上も重要なテーマになりますね。

 武部副大臣 持続可能な資源管理をきちんと実施することが肝要ですね。科学的なデータに基づいた適正な管理を行っていくことで漁業者の所得が向上していくことが大事です。このことを生産者の皆様に理解と納得してもらって進めていくことが重要です。我々は新たな資源管理ロードマップを作っていますが、これに沿って資源管理を行い、資源の回復と漁業者の所得が上がっていく道筋を示していかねばならないと思います。それには、科学的データに基づいた適正な資源評価を提示することです。資源評価が漁業者から「これは信頼できるね」と共感をいただけるものでなければなりません。現場の理解のもとで新しい資源管理が漁業者の所得向上につながっていくことが大事だと思います。

(ここから2面)

ポストコロナの魚食の在り方を検討
魚食普及推進に向け「さかなの日」を制定へ

―漁業後継者の確保と漁船の近代化も必要ですね。

 武部副大臣 先ほども指摘しましたが、漁業就業者の数がピーク時より約8万人減っています。これを転換するには、水産業が成長産業であり、所得が安定していくことが大事ですね。自然との共生や自然の恵みに感謝する謙虚な気持ちで仕事することも、漁業の大きな魅力の一つだと思います。意欲的な漁業者に対して経営基盤の強化や負担軽減に資する漁船リース事業など各種支援策を講じていきます。漁業経営の安定のためには、積立ぷらすをはじめセーフティネット事業を着実に実施していく必要もあります。生活基盤の観点から漁村の活性化も重要です。コミュニティの維持や漁村の賑わいを応援する政策を複合的に進めたいと思っています。

―魚食普及による水産物消費の拡大が、活性化の一番の近道ではありませんか。

 武部副大臣 世界ではどんどん魚食が拡大しているのですが、日本は消費が低迷しています。日本にこれだけ美味しい魚があり魚種も豊富で、加工・流通の技術も進んでいるのに魚食が伸びていません。何が問題なのかをもう一度丁寧に精査する必要があると思います。新型コロナによって新しい生活様式へと対応しなければならない今、どのように水産物の消費拡大を図っていくべきかを農水省内に検討会を作って議論しました。そのとりまとめを見ると、やはり魚は料理に手間がかかる、残渣物が多い、臭いが気になる、価格に対してボリューム感がない等々が指摘されています。こういったマイナスイメージをどう払しょくしていくか。魚食機運を高めるイベントやフォーラム等の開催で理解を深めたり、スーパーの売り場に行ったら「さかなソング」が流れていたりするのも案外大事かもしれせんね。機運を盛り上げるために消費者、魚を獲る人、加工する人、売る人等に集まってもらって「さかなの日」を制定したいと思っています。「さかなの日」推進委員会を作って、来年度に「さかなの日」を制定する予定です。民間の皆さんと力を合わせて国民運動的な機運を創り出したい。女性の目線も大事です。どうやったら美味しく食べてもらえるのか、食べたいと思ってもらえるのかは主婦や子供の目線から考えることも重要です。今は、コロナで外食を控え、旅行にもなかなか行けない状況ですが、コロナが収束すれば、観光などの動きに合わせて魚食普及の取組も進めたい。学校給食への取組と共に、食育の中で魚食を取り上げることも大事だと思います。

―ところで魚は好きですか。ご自分で魚を料理しますか。

 武部副大臣 魚は大好きです。好物はサケを大根や白菜などと一緒に漬け込んだ「いずし」です。自分で料理もしますし、家族の評判も良いです。地元のウニの一夜漬けや蒸しウニの缶詰を使ったクリームパスタなども作ります。地元のサケで自家製のイクラ醤油漬けも作ります。そのほかホタテにしてもカキにしても、言い出したらきりがないほどメニューがあります(笑)。私の妻は管理栄養士と調理師の免許を持っているのですが、食品会社にも勤めていたので、その知識を生かして地元で料理教室も開いています。男女に参加してもらって、出会いの場にもなっていますね。

―水産業界が元気になるようなメッセージを頂きたい。

 武部副大臣 私の選挙区はオホーツク海、日本海に面し、ホタテやサケ、昆布など、水産王国北海道の中でも水産業が盛んなところです。水産業が元気になれば、地域も活性化しますし、水産業は関連する業界が多く裾野が広い。地域経済の大きな柱である水産業が元気になることが一番です。そのためには、若い人たちに魅力ある職場にしなければなりません。気候変動や海洋環境の変化など、原因究明が難しく時間のかかる問題もあります。現場の皆さんの声を聞きながら、ICTの活用やスマート水産業への取組、水産物の高付加価値化など意欲的な取組をする人々、水産業の未来を開拓していく人々をしっかりと支援していきたい。水産業の未来は明るいという実感を持っていただけるよう努力してまいります。